さわや書店 おすすめ本

  • no.64
    2016/9/6UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    凶悪ある死刑囚の告発 「新潮45」編集部編/新潮文庫

    死刑囚からの告発。それは、衝撃的なものだった。
    元暴力団組長であり、とある事件で死刑が求刑された後藤は、本書の著者(「新潮45」という雑誌の編集長)に驚くべき告白をする。それは、後藤が一緒に組んで犯罪を繰り返していた「先生」の存在だ。後藤は具体的に3件の殺人事件の話をする。そして著者に、「先生」を追い詰めて欲しいと頼むのだ。
    死刑囚からの告発であるということに悩みながら、著者らは「先生」に関する取材を始める。半信半疑のまま取材を始めた彼らは、次第に後藤の主張を信じるようになっていく。
    「新潮45」誌上で一大キャンペーンが張られ、メディア側が警察を動かすことで「先生」を追い詰めていくという、ちょっと信じられない展開を記録した一冊だ。
    解説を書いている佐藤優は、「少なくとも過去十年間に私が読んだ殺人事件を扱ったノンフィクションのなかで最大の衝撃を受けた作品である」と言っている。まさにその通りで、異例づくしの展開は、小説を遥かに凌駕するほどのスリルが味わえる。