さわや書店 おすすめ本
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no.442016/8/10UP
フェザン店・長江おすすめ!
写楽
閉じた国の幻 島田荘司/新潮文庫写楽という浮世絵師をご存知だろうか?浮世絵が隆盛を誇った時代の一大スターでありながら、寛政6年の5月からたったの10ヶ月しか歴史上に登場しない、謎に包まれた人物だ。無名でありながら大々的に売り出されたこと、当時の浮世絵の常識を逸脱したような構成、写楽が表に出なくなって以降誰も写楽について言及していないこと。そうした様々な不可思議な点があり、美術界の大きな謎として今も研究者を惹きつけている。
本書は、本格ミステリの旗手であり、同時に自身も美術系の大学で美術を学んだ著者が、ミステリという物語の中で「写楽は一体誰なのか?」という壮大な謎に挑んでいる作品だ。本書の中で島田荘司が提示した解答は、写楽問題に詳しくない僕には非常に納得できるものだった。後半で描かれる、島田荘司の仮説を元にした、江戸時代にこんなことがあったのだろう、という物語も、非常によく出来ていて面白い。