さわや書店 おすすめ本

  • no.117
    2017/1/24UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    円卓 西加奈子/文春文庫

    主人公は、小学三年生の渦原琴子、通称「こっこ」。
    こっこは、『孤独』を愛している。孤独になって、一人涙したい。でもその欲求は、残念ながら叶わない。なにせこっこは大家族なのだ。
    こっこは、人と違うことに物凄く憧れる。だから、『ものもらい』になって『眼帯』をしてきた香田めぐみに憧れ、ベトナム人の両親が『なんみん』で、名前が三つに分かれているグウェン・ヴァン・ゴックに憧れ、吃音が激しく吃った声でしか喋ることが出来ない幼なじみのぽっさんに憧れ、クラス会中『不整脈』になって倒れた朴くんに憧れるのだ。
    それに比べて、三つ子の姉の平凡さと来たら。両親と祖母もアホだ。唯一、祖父である石太だけは、評価してやってもいい、と思っている。
    そんなこっこの日常の物語だ。
    こっこは一貫している。ブレない。「なんとなく」が通じないこっこの日常に触れることで、僕らは、様々な「なんとなく」が僕らの日常を支えているということに気づくだろう。