さわや書店 おすすめ本
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no.2712018/9/11UP
フェザン店・長江おすすめ!
八月十五日に吹く風 松岡圭祐/講談社文庫
本書を読んで、今まで考えたこともなかったが、確かにその通りだな、と感じる疑問がある。それは、「何故日本は比較的平穏な終戦を迎えることが出来たのか?」ということだ。歴史を振り返ってみても、イラク戦争などの近代史も含め、戦勝国は敗戦国を苛烈に扱うことが多い。しかしその中にあって、第二次世界大戦においては、アメリカ軍は平和な占領政策を取った。終戦の直前に、原爆を投下するなどという無慈悲さを見せているにも関わらずである。
その疑問に答えるのが本書だ。
本書では、2つの物語が並行して描かれる。一つは、ロシアとアラスカに挟まれたベーリング海に浮かぶアリューシャン列島にある、周囲をアメリカ軍に取り囲まれたキスカ島に取り残された5000人の日本兵の救助作戦。そしてもう一つは、「源氏物語」を読んで日本に関心を持ち、アメリカ軍で日本語の通訳として従事する20歳の「ロナルド・リーン」の物語。この救助作戦と、後に日本に帰化した一人のアメリカ人の存在がなければ、日本の平穏な終戦はあり得なかった。
日本が戦争に巻き込まれるかもしれない―そんな雰囲気をひしひしと感じさせる国際情勢にあって、戦争の記憶が薄れつつある我々が知っておくべき真実がここにある。