さわや書店 おすすめ本
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no.6142025/2/22UP
本店・総務部Aおすすめ!
侠 松下隆一/講談社文庫
読み始めてすぐに、ああこれは古典落語のような江戸の人情噺だと思って読んでいた。読み終えて、それはまったく見当違いの甘い見立てだった事に呆然とし、長い余韻が残る。これはファンタジーやエンターテイメント性を重視したものではなく、リアルな人間の業の深さ、因果応報、罪と罰など、完全に大人向けのハードボイルド時代文学作品だった。
それでも希望が全く見えないわけでもない。人間の生き方、命の放つ光と重みを読む者に充分に暗示させる。こういった文学作品は、それをどう読むかにすべてが賭かっている。ストーリーだけを追うのであればこれほど面白くない話もないかもしれない。これは映画の早送りや文学作品の速読などでは絶対に理解できない。むしろ何でもないセリフのちょっとした間や、読んでいない余韻の部分にこそ物語の核心があるのだと思う。表紙の朝顔が切ない。