さわや書店 おすすめ本

  • no.444
    2020/12/24UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    今夜、すべてのバーで 中島らも/講談社文庫

    ひとことで言うと、面白い。一病息災という言葉があるが、健康で長生きできるかどうかは別として、ひとつぐらいどこか欠陥のある人の方が、話は断然に面白い。それが体の問題であれ、心の問題であれ。心身ともに健康で、正論を何のためらいもなく吐く人の話など、誰がすき好んで聞くものか。
    本書は妙にリアリティーのあるアル中小説だ。でもこれは題材がアルコールだったというだけで、人間誰しも何かに依存していなければ、生きていくのがつらい場合も多いのではないだろうか。違いは程度の差だけである。この物語では入院する一人のアル中患者を中心に、その周囲の人々を群像劇で描いている。屁理屈をこねる主人公もさることながら、周りの人々が非常に味わい深い。個人的には担当の医者がいい味出していると思う。
    生まれる時も死ぬ時も、人間ひとりではどうにもならない。常に何かに依存し委ねなければ安定することさえできない、弱い存在が人間本来の姿だろう。結果的に寿命を縮めてしまうかもしれないのに、すべてを認め受け入れてもなお、悪癖にもがいてあがいてどうしようもない姿は、非常に愛すべき、人間らしい姿のようにも思えてくる。
    ほんの紙一重の、程度の違いというだけで。