さわや書店 おすすめ本

  • no.197
    2017/12/5UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    二人静 盛田隆二/光文社文庫

    町田周吾は、食品会社に勤めるサラリーマン。パーキンソン病で母を亡くして以来、めっきりと老けこんでしまった父親の介護の問題に、頭を悩ませている。近くののぞみ苑に預けることを決めたが、あくまで短期入所が原則。根本的な解決にはならない。のぞみ苑で父親を担当してくれる乾あかりという女性と親しくなる一方で、万引きがきっかけであかりの娘と関わることになる。場面緘黙症という情緒障害を抱える志保は、人前で喋ることがなかなか難しい。周吾は、父の介護という問題を抱えつつも、そんな二人とも関わりを持とうとするが…。
    彼らは皆、ささやかな日常を得たい、あるいは守りたいと、それだけを希望に生きている。もの凄く大きなことを望んでいるわけではないし、彼らが望んでいることを難なく実現している人もたくさんいる。でも彼らには、境遇や状況や環境がそうさせない。ささやかな日常さえも、努力しなくては勝ち得ることが出来ない。時に諦めそうになったり、必死で無理をしたり、そんなことを繰り返しながら人生に立ち向かっていく姿を描く様が良い。