さわや書店 おすすめ本

  • no.482
    2021/10/21UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    予告された殺人の記録 G・ガルシア=マルケス/新潮文庫

    どんなノンフィクションでも事件の調書でも、観察者の目を通した見方である限り、それは事実の一面でしかない。本書の語り手は登場人物のひとりであり、これもまた一つの見方なのであろう。全体を通じて事実関係をどう見るかは、読者の認識に依るところが大きい。そういう意味では、フィクションの方がノンフィクションよりもむしろ、真実に近い部分を表現できる可能性があるのかもしれない。そんな小説だった。
    著者の息子で映画監督のロドリゴ・ガルシアもいい作品を撮っている。彼の作品は全てを語らず、人物の一部分を切り取る事で全体を想像させる作りになっている。『美しい人』の最終章がとても印象的だ。こちらもやはり、フィクションがノンフィクションを超えるリアリティを生みだす可能性を感じさせる。