さわや書店 おすすめ本

  • no.169
    2017/8/23UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    丸太町ルヴォワール 円居挽/講談社文庫

    これほどスリリングで興奮に満ちた小説も珍しい。
    大きく前後半で分けられるこの物語の前半は、城坂論語という青年が、屋敷に忍び込んだと思しきルージュと名乗る女性の腕を掴んだことから始まる。論語はルージュの正体を暴くべく、一見他愛もない会話から相手の素性を探ろうと知恵を絞った応酬が繰り広げられる。
    そして後半。ルージュと出会ってから3年が経ったある日、論語は「双龍会」と呼ばれる私的裁判の被告席に立つことになった。容疑は、祖父殺し。ルージュと会ったあの日、そぐ傍の部屋で祖父が亡くなっており、その殺害容疑が掛けられているのだ。
    論語は3年間、ルージュを探し回った。しかし見つからない。論語はこの裁判の中でルージュの存在を明らかにすることで、ルージュに近づく手がかりを探ろうとするのだが…。
    バレなければ嘘も捏造もなんでもあり、という「双龍会」もスリリングだが、たった二人が密室で話しているだけで物語が展開される前半部分も圧巻だ。こんなにどんでん返しを畳み掛けられるのか!と驚かされるほどの驚愕の物語です。