さわや書店 おすすめ本

  • no.387
    2020/3/29UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    不道徳な経済学 ウォルター・ブロック/ハヤカワ文庫NF

    本書の内容をすべて正しいと言うつもりはない。ただ、誰しもが一読の価値はあるように思う。ポン引き・売春婦・ヤクの売人・ダフ屋・悪徳警察官など、社会的に不道徳と蔑まれる面々を、経済という側面から全体を俯瞰して見ている。敵の敵が見方であったり、巨悪を抑えるための必要悪があったりと複雑怪奇な世の中で、単純に不道徳だけを規制することが結果として役に立っているのかどうか。
    ひとつだけ言える確かな事は、反対意見にも耳を貸すということ自体、自分の中だけの「正論」や「正義」を振りかざす人よりも、主張に厚みや深さが増すという事だ。いろいろな立場や利害関係、その功罪などを熟考した上でそれでもなお自分はこう思うという、最後の最後に残る道徳だけが本物だろう。
    訳者あとがきにも書いてあるが、映画『セルピコ』の話が印象深い。そう言えば『セブン』のブラッド・ピットのセリフの中にもセルピコが出てくる。いかにもだ。