さわや書店 おすすめ本

  • no.404
    2020/6/27UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    不良 北野武/集英社

    この表紙を見るとあの名作『キッズ・リターン』をどうしても思い出す。それと『アウトレイジ』を混ぜたような物語だ。そして書き下ろしの「3-4x7月」は著者監督の映画『3-4x10月』の別バージョン。映画では石田ゆり子やガダルカナル・タカ、ダンカンなどがかなりいい味を出していた。まあ、いずれの映画も大マジメな人が観ると眉をひそめるような内容かもしれないが、大人向けのブラックジョークというか寓話のように楽しめる人と、全く受け付けない人がいることは百も承知の上で作っているのだろう。
    著者の映画は何の説明もしないで結果だけの画が雄弁に物語るような作りのものが多い。このへんも伝わらない人には全く伝わらないが、好きな人にとっては圧倒的なカタルシスを感じる。画と音楽とセリフのあいだにある、絶妙な間の取り方なども本当に著者にしか出せないものだと思う。文章は一切ないのに非常に文学的ですらある。
    けちょんけちょんにこき下ろされるような、大炎上してしまうような作品を、今こそ作ってもらいたいと願っている。どんなにひどい評価を受けようとも自分は必ず観る。
    北野作品の原点である『その男、凶暴につき』は今観ても強烈な印象を残す。