さわや書店 おすすめ本

  • no.405
    2020/7/1UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ワイルドサイドをほっつき歩け ブレイディみかこ/筑摩書房

    「花の命はノー・フューチャー」(ちくま文庫)の中で妙に心に残ったエッセイがある。「週末のカサノバ」と「終末のカサノバ」というタイトルで同じ“D”という人物が登場する。本書では“ダニー”と名前が出ていて、「いつも人生のブライト・サイドを見よう」と「PRAISE YOU―長い、長い道をともに」というエッセイに関わってくる。やはり妙に心に残るエッセイであった。この4編をつなげて読むとまた感慨もひとしおである。
    正しいか正しくないかは別として、本書に出てくるおっさん達の、地に足の着いた揺るぎのなさ。長いものに巻かれるでもなく、青臭い理想論を叫ぶでもなく自分の生きる道が明確で、乾いていてなんだかとても気持ちがいい。これはある程度人生経験を積んだ人間にしか醸し出せない佇まいだ。著者がそれをうまく表現できるのもまた、人生経験の成せる業なのだろう。「花の命はノー・フューチャー」の中の「ビッチなマミイと少年たち」も好みのエッセイである。
    日本にはこういうチャーミングなおっさんが少ない気がするのが少し寂しい。若い奴から合理的じゃないとか言われても、だからどうしたってんだよぐらい言えるおっさんを目指したい。それがいいか悪いかは別として。