さわや書店 おすすめ本

  • no.627
    2025/6/11UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ヨシモトオノ 吉本ばなな/文藝春秋

    ジャケ買いした一冊。怖くはない。絶妙なスパイスが少々効いているちょっといい話13話。
    この中の一話だけ大きくテイストの違う短編が入っている。「光」というタイトルで、この作品の冒頭には、短篇集全体の流れを壊してしまうかもしれないが、敢えてこれを書かずにはいられなかったという著者の思いが綴られていた。読んでみるとまさしく著者渾身の力作であり、他とは違う熱量を伴って真摯な考えが静かに語られていた。むしろこの作品を書くために他を書いたと言っても過言ではないぐらい秀逸な作品だと思う。そしてラストの「思い出の妙」もさりげなく全体としてのフィナーレ感を思わせるいい作品だった。
    表紙を見てピンときた場合、タイトルも著者名も内容すら全く気にせず、すぐに買って最後まで読んでみてほしい。もしかすると人それぞれかもしれないが、自分の場合を言えばほぼ当たる。映画と同じで期待値が少ない方が面白く感じるのか、何なのかはよく分からない。今回の場合は表紙の絵に語りかけられたような気がしている。