さわや書店 おすすめ本

  • no.348
    2019/9/9UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ミスト スティーヴン・キング/文春文庫

    著者原作による数多くの有名な映画の中でも、『ミスト』は特に傑作だ。霧に包まれて見えない中で得体の知れないものが蠢いているという怖ろしさと、人間自体の怖ろしさとが同時に描かれている。怪物よりむしろ霧そのものが人間心理を狂わせる。限りなく絶望的な状況で、それでも微かな希望を求めて彷徨う様子は、コーマック・マッカーシーの名作『ザ・ロード』をも彷彿とさせる。
    それにしてもラストである。原作とは違う唖然、茫然とする映画のラスト。個人的な好みで言えば原作のラストの方がいいとは思うが、映画史に残る衝撃のラストシーンであることは間違いない。本書では表題作「霧」の他に4つの短編が収録されており、その中でも「ジョウント」がいい。
    なんかいつも後味の悪い映画ばかり紹介しているような気がするので、思いつくままに後味のいい映画を、何の関係もないが列挙しておく。『スモーク』『素晴らしき哉、人生!』『セント・オブ・ウーマン』『リトル・ミス・サンシャイン』『小説家を見つけたら』『8月のメモワール』『クリード』『ミッドナイト・ラン』『いまを生きる』…。私は決してヤバい人間ではありませんよという言い訳を勝手に押し付けて終える。