さわや書店 おすすめ本

  • no.397
    2020/5/4UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ペスト カミュ/新潮文庫

    今改めて、話題の「ペスト」である。よく分らない病に対する人間の反応が、現在の世界と酷似している。全員に降りかかる災厄と世の不条理感。その中にありながらも人は理性を保ちつつ適切な振る舞いを行えるか。本書中の言葉を引用すれば「人は神によらずして聖者になりうるか――」。
    自粛要請に応じない人や、逆に厳格な自粛を求める人なども含め、どこか自分さえ良ければというのが根底にありはしないか。そして自分の主張に合わない意見を叩きまくるのも現代を象徴し、事態を深刻化させている。結局のところできる事はマスクをして手を洗うような当初の対策しかないのに、この未知なるウイルスに対する人間同士の反応もウイルスそのものと同等に恐ろしい。敵は自分自身の中にもある。
    スティーブン・キング原作、フランク・ダラボン監督の映画『ミスト』を思い出した。一見、B級パニックムービーを思わせるこの映画だが、怪物と共に人間の怖さが描かれている傑作だ。