さわや書店 おすすめ本

  • no.297
    2018/12/25UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    フランス座 ビートたけし/文藝春秋

    「俺たちもう終わっちゃったのかな」「ばかやろう、まだ始まっちゃいねえよ」――『キッズ・リターン』
    「ありがとう・・・ごめんね」――『HANA‐BI』
    「おじちゃん名前なんていうの」「菊次郎だよばかやろう、帰れ早く」――『菊次郎の夏』

    すっきりとしていて深い余韻を残す印象的なラストシーン。著者の映画はどれもハッピーエンドには決してならないものの、それでもいいんじゃないかと思わせてくれる。それは芸人として今まで駆け抜ける中で見てきた、多くの人間から得た人間観によるものなのだろう。人間を見つめる濃度が一般的な人とは全く違う。
    本書は著者の自伝的小説だが、描きたかったのは師匠・深見千三郎を中心とした、周りの人たちの事だったのだろう。今の風潮では考えられない時代だったとはいえ書き残す価値があり、今それができるのは著者だけだと思う。
    この小説も、ラストの一文は見事としか言いようがない。