さわや書店 おすすめ本

  • no.448
    2021/1/21UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ビルバオ―ニューヨーク―ビルバオ キルメン・ウリベ/白水社

    知らない土地で絵画や音楽、映画などを鑑賞し、思いがけず心地のいい空気を感じる旅のような、不思議な読書体験だった。
    小説を書くための構想それ自体が小説になっている。本編を書かずに小説を感じさせる物語なので、どんどん出てくる地名や人物名などがよく分からなくてもあまり気にせず、文章自体に身を委ねていいと思う。異文化や他者に不寛容な現代にありながら、何世代・何層もの連なりの中での、人間のゆるやかな受容性を考えさせられる。
    作中にあるメリル・ストリープのインタビュー記事が印象的だ。サンセバスティアン国際映画祭にやってきた彼女に対する記者たちの質問。「私たちにできる最良の質問と、その答えは何ですか?」女優は即座にこう答えた。「今、フィクションをつくることに意義はあるのか」そしてその答えは「本当のことを語るなら、意義はあります」。