さわや書店 おすすめ本

  • no.543
    2023/3/29UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ノー・カントリー・
    フォー・オールド・メン コーマック・マッカーシー/ハヤカワepi文庫

    傑作、復刊。
    これは娯楽作品として面白い面白くないというような基準だと、判断を見誤る。映画を観たことのある人もない人も、何を言っているのかもう一度じっくり考えてみてほしい。生きる本質を容赦のない物語で示す、ひとつの芸術作品なのだと思う。
    普段の何気ない選択ひとつひとつで人は形作られる。ほんの些細な事でも何かを選択していて、それを無かったことには決してできない。すべてを抱えたまま、老いと死は全員に必ず訪れる。そんな当たり前すぎて忘れている、絶対に取り戻す事のできない「過去」を、「現在」を、そして取り返しのつかない「未来」を表している。これは著者の哲学と言ってもいい、厳格に不可逆的な生命観だと思う。
    『ノーカントリー』と共に、コーマック・マッカーシーで思い出す映画が『悪の法則』だ。これもエンターテイメントとして観ると最悪かもしれないが、基本的には同じ事を言っている。どちらかと言えばこちらの方が分かりやすく、但しこちらの方がよりグロテスクなので取扱いには要注意だ。いずれの本も映画も説明は何もない。作品はこちら側がどう見るかに全て賭かっているので、子供には勧められない。いや、どうだろう。本書にこんな一節がある。
    ―“真実ってやつはいつだって単純なんだろうと思う。絶対そうに違いない。子供にもわかるほど単純でなくちゃならないんだ。子供の時分に覚えないと手遅れだからね。理屈で考えるようになるともう遅すぎるんだ。”
    本店の「Excellent movies & Original books」コーナーに追加する。いつ読んでも何回観ても新たな発見と思索があり、永久保存に値すると確信している。
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