さわや書店 おすすめ本

  • no.486
    2021/11/22UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ナチュラリスト 福岡伸一/新潮文庫

    ドリトル先生『月から帰る』のラストシーン深読みに、著者の生命観と文学的センスが光る。「生命とは何か」。インターネット的な答え合わせからは到達し得ないその考察が面白い。
    細胞は造ること以上に壊すことが重要だという。破壊と創造を絶え間なく繰り返す事で生命をキープする。創造的破壊。一見変わらないように見えるものでも、内部では絶えず変化し、新たな秩序を作り直す事で維持している。それでも、ひとつの個体としての終わりはいつか必ず訪れる。しかし生命は有限だからこそ、その輝きを保っていられるとも言える。これらの見方はあらゆる物事に共通する面が多いように思う。
    本書は専門分野だけにとどまらず、広い見識を持つ著者だからこそ到達した境地、「センス・オブ・ワンダー」だ。