さわや書店 おすすめ本

  • no.75
    2016/10/11UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    ナガサキ
    消えたもう一つの
    「原爆ドーム」 高瀬毅/文春文庫

    長崎には、原爆の歴史を色濃く残すような遺構が存在しない。
    実は、原爆によって半壊し悲惨な姿のまま廃墟となったキリスト教の教会である浦上天主堂というのが存在したのだが、戦後取り壊されてしまった。著者は長崎出身で、母から繰り返し被爆体験を聞いたが、浦上天主堂については知らなかった。長崎に生まれ育った者でも浦上天主堂を知っている者は少ないという。
    何故か?
    本書はその疑問を追うノンフィクションである。
    当時長崎大司教区のトップである大司教であった山口大司教。「長崎の鐘」が大ベストセラーとなり、「浦上の聖者」と呼ばれた永井隆。当時の長崎市長であった田川市長。主にこの三名と、隠れキリシタンの聖地であった浦上という土地、そしてアメリカの遠大な世界戦略が絡まり合い巻き起こる、浦上天主堂の取り壊しの真実がここにある。