さわや書店 おすすめ本

  • no.376
    2020/1/12UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ナイン・ストーリーズ J.D.サリンジャー/新潮文庫

    先日、ふとした病で5日間入院した。人生初の入院生活はベッドの上での時間が結構長く、いろいろな事を改めて考えさせられる。まず、病院はすごいという事。生きるために口から食べることができる喜びと有り難さ。自分一人で生きていると思っている事の大きな勘違い。そんな当たり前の事実を今更ながら、まざまざと痛感させられる。そして文学作品を読む時の、脳内のエネルギー消費量の大きさなども実感する事ができた。体の他の部分を治している時に読む文学作品は、脳がその処理に追いつかないのである。
    文学作品というのは、まあはっきり言ってしまえば普段でも大抵何を言っているのかよくわからない。それを文字情報から一度自分の頭の中で十分に咀嚼する事により、初めてその味わい深さを知るのである。映画で言えば例えば『マグノリア』『インヒアレント・ヴァイス』『めぐりあう時間たち』『美しい人』『マルホランド・ドライブ』『ノー・カントリー』『悪の法則』『パターソン』『東京物語』などは文学作品の部類に入るだろう。
    本書はサリンジャーの有名な傑作短編集だ。この中で最も難解なのが冒頭の「バナナフィッシュにうってつけの日」であり、著者を最もよく表しているのもこれである。他は読みやすい短編集なのでざっと全部読んでしまってから、もう一度最初に戻って読んでみてほしい。