さわや書店 おすすめ本

  • no.504
    2022/5/23UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ダロウェイ夫人 ヴァージニア・ウルフ/集英社文庫

    『めぐりあう時間たち』という映画がある。ポケットに石を詰め、川で入水自殺した本書の著者ヴァージニア・ウルフを軸に、時代の異なる3人の女性の1日をそれぞれ、ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープが演じている。この3人を繋ぐモチーフとなるのが本書「ダロウェイ夫人」だ。この小説は訳者あとがきによると、もともと「時」と名づけられていたそうだ。映画の方も原題は『The Hours』となっていて、どちらも1日の物語ではあるものの意識は過去と現在を行き来し、今の状況とともに時間の経過を想わせる物語だ。たった1日、だがその人の全人生を象徴するような1日を深く表現し、すべてが凝縮された一瞬を描き切っている。
    さわや書店本店では、傑作映画とその原作を集めたコーナーを設置した。本書は原作本というわけではないが、本の世界観と見事に一致した映画なのでこちらも入れてある。その他、何度観ても何度読んでも、より一層違った見方や新たな発見の際立つ名作ばかりを集めたので、ぜひ一度現物を手に取って確認してみてほしい。