さわや書店 おすすめ本

  • no.502
    2022/4/22UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    スタンド・バイ・ミー スティーヴン・キング/新潮文庫

    公開当時、映画館で観た記憶がある。正直言ってあまりピンと来なかった。それはそうだろうと、今ならわかる。これは子供向けの物語ではない。大人が過去を振り返った時にだけ理解することができる光なのだ。絶対にあの夏は戻らないという、ちょっとしたセンチメンタリズムと共に。
    『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』という長い映画がある。少年期、壮年期、老年期が交錯する物語の中で、ラストシーンには様々な解釈がある。個人的には、少年期は美化された過去の思い出、老年期は、こうあってほしいという美化された“未来の記憶”、その中間だけがリアルな現実だと思う。ラストの満面の笑みはそのことを示す表情だと思っている。
    記憶は美化されたものであったとしても、それは間違いなく本人にとってかけがえのない宝物だ。これは感動する本や映画に出会った時も同じだろう。言葉にすればすぐに消えて無くなってしまいそうな、それでも残る確固たる想い。本書もそれを見事に表現している。