さわや書店 おすすめ本

  • no.180
    2017/10/10UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    スコーレNo.4 宮下奈都/光文社文庫

    麻子は、小道具屋の長女として生まれた。一つ下の妹・七葉は自由奔放で容姿も可愛い女の子。麻子は、自分は七葉のようには生きられない、というほのかな劣等感を抱えながら、一方ではどんな友達とも共有することのできない時間を過ごすことの出来る大事な関係として、妹とうまいことやってきた。
    そんな麻子は、周囲の価値観に混じれないと感じたり、自分には大事な何かが欠けていると感じたりしながら、一方でそれぞれの時代で恋をしていく。しかしそれは、麻子の中の欠落を徐々に浮かび上がらせていくような、二人でいるのにまるで一人きりのような、そんな寂しさを麻子の与えるものだった。新しい環境や新しく出会う人々に馴染めずに不安だったり、自分自身の生き方に疑問を持ったりと回り道を続けながら、麻子はこれまでの人生や家族や自分自身のあり方について、正しいと思える場所に辿りつくことが出来る…。
    派手さはないし、特に仕掛けがあるわけでもない作品なんだけど、読み終わって、あぁなんだかよかったな、いい本を読んだな、と思えるような作品です。