さわや書店 おすすめ本

  • no.582
    2024/3/1UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    シッダールタ ヘルマン・ヘッセ/新潮文庫

    川の存在に対する解釈が非常に考えさせられる。昔古典で習った「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」を思い出したが、本書ではもう少し踏み込んだ哲学的、宗教的解釈になっている。
    過去・現在・未来が同一で、しかも瞬間瞬間の全てにおいて完成しているのが川であるという。水蒸気、雨、川、海、そしてまた水蒸気と、切れ目のない一つの構造として見ると、確かに時間は存在しないものなのかもしれない。人間も若さの中に老いがあり、生の中に死を宿し、善の中に悪を見るなどと、読後様々な思索を巡らされる。
    老いも若きも、いい時も悪い時も、今この一瞬一瞬がすでに完全なひとつの人生、そのものなのだと思う。