さわや書店 おすすめ本

  • no.443
    2020/12/18UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ゴッドファーザー マリオ・プーヅォ/ハヤカワ文庫

    映画は映像だけで多くの物語を想わせ、小説は文章だけで広がる情景を想わせる。心に残る映画に原作があるならば、迷わず読んでみた方がいい。映画も本も双方の理解が深まり、より一層味わい深いものになる。
    フランシス・フォード・コッポラ監督の映画『ゴッドファーザー』は、原作を忠実に再現していて間違いなく素晴らしい。しかしその続編のPARTⅡがさらに素晴らしいという点で、これはやはり稀有な映画だと思う。PARTⅡではマフィアファミリーの原点の物語と、現在の物語とが交互に進み対比することで世の無常観や、金と権力の魔力、そしてファミリーを守ろうとするあまり逆に壊してしまうという矛盾と哀しみがより深く表現されている。そしてPARTⅢは贖罪の物語だ。これらの物語は、あくまでも原作を元に派生しているということが読めばわかる。
    PARTⅡの2つの物語の主演は、若き日のアル・パチーノとロバート・デ・ニーロ。以来、映画界トップスターの道をそれぞれに歩み続け、1995年公開の『ヒート』で再び共演する。二人が最も輝いていた時期と思われるこの映画では、プロフェッショナル同士のしびれる対決の中、少しだけ交わる二人の邂逅が、感慨深い。
    愛や希望を謳い上げるものではないにせよ、これらの物語は世代や善悪を超えた壮大な叙事詩であり、人間を深く描くエンターテイメント作品である。今年の年末年始は一旦、現在の時を忘れ、古い名作に身を委ねてみるのに適していると思われるが、どうか。
    安心して万人にお勧めできる古い名作映画だと、アガサ・クリスティ原作(「検察側の証人」)の『情婦』や、季節柄『素晴らしき哉、人生!』など、どうだろう。