さわや書店 おすすめ本

  • no.461
    2021/6/7UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ゲンロン戦記 東浩紀/中公新書ラクレ

    泳ぎ方を習得するには、100回の講義よりも1回水に入った方が早くて情報量も多い。というか、体験と理論は両輪なのだろう。両方あってはじめて生きたものになる。
    本書は哲学者で批評家である著者が会社を設立して10年間の軌跡をまとめた本だ。特に失敗談には、なんとなく分かるなあという部分が多い。ネットで有名になった著者だが、経営という非常にリアルで現実的な問題と向き合う事で、その理論にも説得力や厚みが増しているのだと思う。失敗を赤裸々に語れるというのも、知のプラットフォームを目指す著者ならではの懐の深さなのだろう。決して同質なものだけを集めるのではなく、その主張にバランス感覚の良さを感じさせる。そのあたりの感覚は、最近文庫化した『ゆるく考える』の最後、「ゲンロンと祖父」を読むと、妙に納得したりする。