さわや書店 おすすめ本

  • no.395
    2020/4/24UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    クモのイト 中田兼介/ミシマ社

    気が滅入る情報ばかりがどうしても目に耳に入ってしまう。新型コロナウイルスで連休中も不要不急の外出を控えるべきとするならば、家で映画を観るか本を読むという旅に出るしか、垂れ流される情報から身を守る術はない。ウイルスにやられる前に心がやられてしまいそうだ。
    そんな時には、ちょっと外に出て身近にある自然に目を向けてみるのもいいかもしれない。どこにでもある足元の草花や昆虫の世界などこれから活発になる季節だ。そこには人間社会とは全く別の小さな小宇宙があり、現在まで種を生き残らせた者の秩序と逞しさがある。本書は一般的に言って嫌われ者であるクモの話だが、その見方がちょっと変わった。網の張り方やその角度など2~3日注意深く観察してみたくなる。
    「花と昆虫、不思議なだましあい発見記」(田中肇/ちくま文庫)も面白い。花と虫の共存共栄などという生ぬるいものではなく、双方生きていくために必要な振る舞いをし続けた結果つないできた命なのだろう。どちらの本も無性に外に出て確認してみたくなり、そしてそれはいつでも近くに転がっている。こんな時だから日がな一日観察し、ちょっと発見したり自らを省みたりするのも、情報に流されっぱなしの1日よりはよほどましである。