さわや書店 おすすめ本

  • no.126
    2017/2/21UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    キネマの神様 原田マハ/文春文庫

    大企業で、課長としてシネマコンプレックス建設計画の中心的な役割を担っていた丸山歩は、ほんの些細なきっかけから、39歳にして会社を辞めざるをえなくなってしまう。ちょうどまさにそのタイミングで父が入院、父の仕事であるマンションの管理人の仕事を、一週間有給を取ると嘘をついて肩代わりすることになった。
    この父が、実に厄介な男なのだった。ギャンブル狂で借金に首が回らなくなっているが、80歳になった今も生き方を改めようとしない。しかしこの父が、紆余曲折を経て、「映友」という映画雑誌でライターとして記事を書くことになったのだ。
    自分の欲望にも人の気持ちにも真っ直ぐで、それでいて四角四面ということもなく、だらしないし適当だったりもする。母や歩に散々迷惑を掛け通しで、それでも80年間まるで変わらないまま生きてきた父が、物凄い波を呼び起こすことになる。その過程で起こる父親の変化に、主人公や母だけでなく読者も感動させられる。