さわや書店 おすすめ本

  • no.176
    2017/9/25UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    カラスの親指 道尾秀介/講談社文庫

    かつて悪徳な金貸しに金をむしり取られ、さらにそのせいで妻を亡くしている武沢竹夫と入川鉄巳という二人の詐欺師は、ある日一人の少女と出会う。彼女も同じく、詐欺で生計を立てているようだ。成り行きで一緒に住むことになり、さらに同居人は増えていく。彼らは、ずっと後悔に囚われているある過去を払拭するために、壮大な計画を実行に移すのだが…。
    赤の他人同士が寄り集まって家族のように過ごしている、その生活の描写がまずとてもいい。辛い過去を抱えた面々が、お互いに寄り添うようにして生きる日々の描写に、色んな伏線が潜んでいるので侮れない。そして彼らが一世一代の大勝負に出てからのどんでん返しの連続は素晴らしい。正直、あんまり内容に触れられない作品なのだけど、詐欺師たちの物語なのに、心がじんわり暖まるような素敵な物語だ。