さわや書店 おすすめ本

  • no.475
    2021/9/6UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    インドラネット 桐野夏生/KADOKAWA

    受け継がれる過去の政治的混乱と今につながる現代性。古いものと新しいものが混ざり合うカンボジアの混沌とした空気感が東南アジアの熱風とともに伝わってくる。主人公と一緒にカンボジアを旅するような臨場感、次々と厄災に巻き込まれていく焦燥感と共に、最後は突き放されるような読後感だった。
    最近のアフガニスタン情勢も含め、世界の至る所で今も燻り続けるテロや紛争。いくつものイデオロギーが衝突し、また政治的にも利用しようとする大国の思惑などが入り混じる事で、よりカオスを生んでしまう。本書はそんな不穏な世界と、人間の二面性を垣間見るような物語で、平和に浸かりきった今の日本人とのギャップを感じさせる。
    平和は当たり前の事などでは決してなく、その前提を忘れると大きな勘違いをしてしまう。
    映画『地獄の黙示録』を改めて観てみた。