さわや書店 おすすめ本

  • no.452
    2021/3/10UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    わたしは贋作 バーバラ・ボーランド/ハヤカワ文庫

    正解はどこにもなく、人が生きていくために必要なものでもない。ただ、ごくわずかな人にとって、それは生きる指針ともなり得る究極の美的感覚であり、ある意味信仰に近いものなのかもしれない。そして作者の手を離れた瞬間に、作品は芸術的価値から商品的価値へと移り変わったりもする。芸術の世界はよく分らないけど、凄い世界だと思う。
    あらゆるアートの本質や価値とは何なのか。今の時代AIでも音楽や絵画などかなり高度な作品が作れてしまう。いろいろな見方があるにせよ、最終的には作者自身のアイデンティティーが作品の全てだろう。技術面もさることながら、芸術作品を創るという人の生き方や行為そのものがすでに芸術だ。音楽でも映画でも舞台でも本でも、それは同じ事だろう。芸術家である以上、売れる売れないはまた別の話として。
    読み終わり、そんなことを思ったりする。本書は美術ミステリーで、語り手である抽象画家「わたし」の成長物語でもある。