さわや書店 おすすめ本

  • no.281
    2018/10/16UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    でんでら国 平谷美樹/小学館

    「どう死ぬか」というのは、誰にとっても関心のある事柄だろう。特に、平均寿命が伸び、しかしそれに比例するようにして老後の時間の使い方やお金に対する不安が増大している現代においてはなおさらだろう。
    「どう死ぬか」の一つの答えとして、本書は非常に面白く読める一冊だ。もちろん、エンタメ小説として読んでも十分に面白いのだが、「どう死ぬか」が「どう生きるか」と直結する物語の設定と展開は、幕末を舞台にした物語ではあるが、現代にも通じる何かを感じ取れる物語として受け取ることが出来るだろう。
    陸奥国八戸藩と南部藩に挟まれた大平村には姥捨てという仕組みがあった。60歳を越えた者は自ら山に入らなければならないのだが、実はその山奥には「でんでら国」という、60歳以上の者しかいない地があり、そこで税金を収める必要のない米などを作って生活をしている。
    一方、大平村には穏田(税金逃れをしている田んぼ)があるのではないか、と睨んだ役人が大平村へとやってくる。「でんでら国」の存在を隠したい大平村の面々と、税金を取り立てたい役人の騙し合いのバトルを楽しんで欲しい。