さわや書店 おすすめ本
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no.2652018/8/21UP
本店・総務部Aおすすめ!
その犬の歩むところ ボストン・テラン・田口俊樹訳/文春文庫
犬。最も古くから人間に飼われている動物。社会性を持ち、高い知能を有する。人間の知能はしばしばプラス面とマイナス面を出してしまうが、犬はどこまでもまっすぐにプラス面だけを追い求める。古くから人間に飼われてきた犬は、シンプルに一瞬で人間の本質を捉えていると思う。その愛情も、哀しみも。
ケネディ大統領暗殺、9.11同時多発テロ、イラク戦争、ハリケーン・カトリーナなど、アメリカの歩んできた近現代史を背景に語られる本書は、誇り高きその犬に関わったすべての人間たちの生きる哀しみと、再生への希望を描く物語だ。
「これがアメリカであるはずがない」と作中で語られる場面がある。現在はどの国でも同じような感情や矛盾が生じているのだと思う。複雑さを増す世界において原点を取り戻すための動きが、ますます原点から遠ざかっているような気がしてならない。人間の頭脳より人工知能よりも足元の小さな犬にこそ、その答えはあるのかもしれない。