さわや書店 おすすめ本
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no.5052022/5/28UP
本店・総務部Aおすすめ!
そして、ぼくは旅に出た。
はじまりの森ノースウッズ 大竹英洋/文春文庫読みながら、ワンダーフォーゲル部時代のある夏の合宿を思い出した。北海道大雪山系。山の最深部に入ると出会う登山者も少なく、明らかに野生動物のテリトリーに場違いな人間がお邪魔をしているという感覚だった。姿は見えないもののなにか、こちら側がじっと観察されているような気配をひしひしと感じる。論理的にあるいはテクニカルな部分で正しければすべてが正しいと思うのは、人間の驕りだろう。北海道の山中で10日間ほど食料とテントを持って縦走した、遠い思い出。
本書は写真家を志した著者が大学卒業後、憧れの人物に会いに行った時の紀行文だ。どんなに技術的に向上し経験を積み上げたとしても、それを目指した時の瑞々しい第一歩には、思い出だけにとどまらず忘れてはならない大事なものが詰まっていると感じた。これはあらゆる仕事や生活の面にも同じことが言えると思う。いろいろな理論や技術が進化していく一方で、何がしたいのかという根本を見失うと、ただ翻弄されてしまう。道に迷ったら分かる地点まで戻る事が鉄則だ。答えは自分自身の中にしかない。そんな初心の大切さを思い出させてくれる本だった。