さわや書店 おすすめ本

  • no.114
    2017/1/10UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    さよならドビュッシー 中山七里/宝島社文庫

    大富豪である祖父を持つ香月遥は、インドネシアから来た、大地震で両親を失った従姉妹・ルシアと共に年末年始を過ごしていた。ある日、自宅の敷地内に祖父が建てた離れに、遙とルシアは泊まることになった。その夜大火事が起こり、離れは全焼した。
    全身火傷を負い、顔面を初め全身の皮膚移植の末になんとか一命を取り留めた遥は、祖父が遺産の大半を自分に残してくれたことを知る。しかしそれは、ピアニストを目指すためにしか引き出されない、条件付きの遺産相続だった。やがて彼女は、自分が命を狙われていることに気づくが…。
    ミステリではあるが、それ以上に、大火傷を乗り越えてピアニストを目指す遥の姿に打たれる作品だ。そこには、尋常ではない経歴を持つ、魔術師のようなピアノ教師・岬洋介の存在がある。彼の存在が、この作品を非現実的にしていない。コンクール出場に至る奇跡は、感動的である。