さわや書店 おすすめ本

  • no.425
    2020/10/12UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    お腹召しませ 浅田次郎/中公文庫

    著者の時代小説は現代とのつながりを意識させるものが多い。決して今とは関係のない大昔の物語ではなく、ほんの2~3代前にはまだ記憶に新しい話なんだよというあたりのリアリティが、DNAに直接訴えかけるというか、胸を熱くさせる。
    本書も幕末から明治にかけてのお話6篇。ユーモアも交えながら落語のように読めて最後はほろりとさせられる、著者一流の歴史観と人情話だ。変化の激しい時代にあって、変えるものと変えてはならないものを改めて考えさせられる。著者の物語は、物事の価値観が揺らいでしまった時に本質に立ち返り、一本筋の通った時代小説で背筋を伸ばしてくれるような思いがする。ラストの「御鷹狩」は見事だ。