さわや書店 おすすめ本

  • no.518
    2022/8/29UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    あなたの本 誉田哲也/中公文庫

    「世にも奇妙な物語」のようでもあり「笑ウせえるすまん」のようでもある。さらっと読めて切れ味のいい、ブラックユーモアと皮肉の利いた短編集。面白がれる人と、がれない人がいるとは思う。具体的に何が面白いのかと問われて説明しようとすると、とたんに野暮になる。こういうシニカルな物語をお勧めするのはなんとも難しい。北野武の映画の面白さなど説明できるはずもなく、また筒井康隆やロアルド・ダールの小説も同様だろう。好みが分かれるのは承知の上で、まあ読んでみてほしい。
    最後の方に入っている新装版特別収録掌篇のラスト「選挙公約」なども全く意味のない物語に感じてしまう人もいるかもしれない。ただ、選挙のための公約に、あるいは反論のための反論に、そもそも意味などあるものなのか?という政治への根本的な問いや皮肉が込められ、ブラックジョークのようで面白い。