さわや書店 おすすめ本

  • no.68
    2016/9/20UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    「AV女優」の社会学なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか 鈴木涼美/青土社

    『私と同じような街で育った女性が、自らの商品的価値を一度も意識しないで過ごすことはほとんど不可能だ。しかし、それをモラルと呼ぶのか生理的嫌悪と呼ぶのか理性や常識と呼ぶのかは別として、地続きに広がる性の商品化のどこかで線を引くことを、そしてそれをなるべく控えめに引くことを、私たちは直接的に、もしくは間接的に求められてきた』
    こういう感覚が、本書を物した著者の内側にはある。AV女優という職業は、日常に満ちている「性の商品化」の延長線上にあるに過ぎないのだ、と。自身も女性である著者が、自ら捉えたそういう感覚をベースにして、AV女優という存在を切り取っていく。
    その中で、著者は「面接」に着目する。彼女たちは「語る」ことで、「AV女優になりたい者」から「AV女優」へと変身していく。
    AV女優というものを社会の中に位置づけて捉えつつ、同時に、AV女優という個にも着目する異色のノンフィクションだ。