さわや書店 おすすめ本

本当は、目的がなくても定期的に店内をぶらぶらし、
興味のある本もない本も均等に眺めながら歩く事を一番お勧めします。
お客様が本を通して、大切な一瞬に出会えますように。

  • no.36
    2016/7/27UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    ある奴隷少女に
    起こった出来事 ハリアット・アン・ジェイコブズ/大和書房

    19世紀末。奴隷制度が続いていたアメリカで、一人の奴隷少女が綴った記録、それが本書だ。しかし本書は、発行から100年近くもフィクションだと思われていた。奴隷が書いたとは思えない聡明さ、そしてその壮絶という言葉では表現しきれない人生が、現実を描写したものだとは思われなかったのだ。
    優しい女主人に見守られ、奴隷であると自覚しないまま育った少女時代。しかし女主人の死によってジェイコブズは、ある白人医師の元へ売られる。そこから始まる彼女の壮絶な人生。強姦の横行、7年間の屋根裏部屋での生活、そして不埒な医師から逃れるための勇気ある決断。そのどれもが、僕らの心を揺さぶる。
    現代に生きる僕らにはそれがどれほど醜悪なものであるか分かるが、奴隷制度はかつて当たり前のものだった。僕らが生きる時代にも、様々な「当たり前」がある。それらは、100年後振り返ってみても正しいと思えるか。本書は僕らに、そんな問いも突きつけるのだ。

  • no.35
    2016/7/27UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    ハチはなぜ
    大量死したのか ローワン・ジェイコブセン/文春文庫

    世界的に農業が危機的状況に陥っている、という事実を、あなたは知っているだろうか?
    2007年の春までに、北半球から四分の一のミツバチが消えた。この現象は「蜂群崩壊症候群(CCD)」と名付けられ、世界的な問題として認識されている。
    何故か?
    ミツバチが存在しないと、果物を始めとする昆虫に受粉を手伝ってもらう植物のほとんどが受粉出来なくなってしまうからだ。ミツバチほど植物の受粉を精力的に行う昆虫はおらず、ミツバチの減少は農業に直結する大問題だ。
    このCCD、未だに原因もはっきりとは究明されておらず、対策もままならないと言う。
    本書は、どのようにCCDが認識され、原因追究がどのように行われ、どんな対策が行われようとしているのかなど、本書発行時点でのCCDを取り巻く状況が描かれる。今後世界的に人口が増え、食糧難が顕在化すると言われている中、このCCDは、知らないでは済まされない問題だ。

  • no.34
    2016/7/27UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    ゴーマニズム宣言
    脱原発論 小林よしのり/小学館

    東日本大震災を境に、日本人の原発に対する意識は変わったはずだ。しかし、震災直後と比べると、また元に戻りつつあるようにも感じる。
    原発もいいんじゃないか、という意見に。
    原発という技術そのものは素晴らしいかもしれない。しかし僕は、原発を取り巻く人々(下請けに汚れ仕事を押し付ける構造や、原発村と呼ばれる人々のこと)がダメ過ぎると感じるので、人類は原発を持つべきではない、という考えでいる。
    本書は、小林よしのり氏が、様々な観点から「脱原発」を主張する作品だ。本書の内容を無条件で受け入れているわけではないが、僕には全体的に納得しやすい話だった。原発に賛成であっても反対であっても、自分の考えを明確にし、そして議論を深めるためにこういう本を読むのは大事ではないかと僕は感じる。

  • no.33
    2016/7/27UP

    フェザン店・田口おすすめ!

    いつもおまえが
    傍にいた 今井絵美子/祥伝社

    「立場茶屋おりきシリーズ」を筆頭に、多くの人気シリーズを世に送り続けている時代小説家・今井絵美子の自叙伝である。ステージ4の乳癌で、3年の余命宣告をされるが、抗癌剤治療を拒否し、執筆に余命を懸ける女流作家の生き様が描かれている。苦難に出遭っても志を曲げずに己の想いを貫いた人生。今井作品に登場する主人公たちの真っ直ぐで一途な姿は、まさに今井さんの分身だったのだろう。
    「手がけたシリーズは、全て完結するまで死ねないわ!」という今井さんの言葉が忘れられない。
    同時期に発売された、立場茶屋おりきシリーズ最新刊「幸せのかたち」(ハルキ時代文庫)は、涙なしには読めなかったのは、物語が佳境にさしかかっていることもあるのだが、おりきが今井さんと重なって見えたのかも知れない。

  • no.32
    2016/7/27UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    教養としてのプロレス プチ鹿島/双葉文庫

    プロレスの魅力に関して、普通は言葉にするのが野暮だったり難しかったりする部分を、様々な事例を交えながらこれでもかと伝えてくる本書。面白いのはプロレスファンの視点から現代の風潮や社会問題までをも語っている点だ。プロレスへの熱い想いが溢れすぎ、こじつけのような所もそれはそれで楽しく読むことができるし、たまに普遍的な物事の本質や核心を突いていてハッとさせられる。翻って、私達の本屋ももっとプロレス的であるべきだなどと思ってしまった。書店は優等生みたいにこぎれいな顔をしているが本来はもっと懐が深く、清濁併せ呑むような怪しげな魅力のある場所のはずではなかったか。本書に当てられ、若干プロレス者寄りの思考になっているのが危険でもある。

  • no.31
    2016/7/27UP

    フェザン店・松本おすすめ!

    心やすらぐ
    国宝仏像なぞり描き 田中ひろみ/池田書店

    いま秘かなブームになりつつあるのが、仏像のなぞり描き。試しにやってみると、その曲線美にうっとりしつつ心がフワフワと軽くなってゆくのを感じます。国内最高峰とされる国宝仏像。特に「美男子の仏像」のページにはまる人が続出しているようです。いつの間にか日常を忘れ、深い癒し(とトキメキ)を得ることができると思います。

  • no.30
    2016/7/20UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    化石の分子生物学
    生命進化の謎を解く 更科功/講談社現代新書

    「化石の分子生物学」を一発でイメージする最良の例が「ジュラシックパーク」だ。蚊が閉じ込められたコハクの化石が発見され、その蚊が吸った恐竜の血から、バイオテクノロジー技術を使って現代に恐竜を蘇らせる、という物語は、まさに「化石の分子生物学」を元にしたものだ(実際に「ジュラシックパーク」が公開される前年に、コハクの中のシロアリから古代DNAが発見された)。
    さて、そんな「化石の分子生物学」だが、「化石から古代DNAを採取して研究する」というだけには留まらない。他にも、現在生きている生物のDNAを研究することで分子の進化速度を判定したり、あるいは生物の進化の枝分かれの時期を推測したり、というような研究もある。それまでは、化石を「観察する」ことでしか古代生物の研究が不可能だったが、古代DNAの研究や、あるいは分子の進化速度の研究などによって、新たな可能性が拓けた。本書は、そんな「化石の分子生物学」の世界の一端を垣間見れる作品だ。

  • no.29
    2016/7/20UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    リーマン博士の大予想
    数学の未解決最難問に挑む カール・サバー/紀伊国屋書店

    ワイルズが解き明かした「フェルマーの最終定理」や、ペレルマンが解き明かした「ポアンカレ予想」など、一般社会でも大きく報じられ認知された数学の証明はいくつか存在する。
    それらに匹敵するほど重要で、かつ難問だと思われている予想が存在する。それが「リーマン予想」だ。
    リーマン博士が提唱したこの予想は、ゼータ関数という一般にはなかなか馴染みのない分野に関するものだが、証明されれば、謎めいた「素数」という数について非常に重要な事実が明らかになる、とされている(こんな風に書いている僕も、リーマン予想そのものをちゃんと理解できているわけではない)。
    本書はリーマン予想の本だが、数学の話というよりは数学者の話である。リーマン予想という最難関を、これまでどのような数学者がどのように攻略しようとしてきたのかが描かれる。
    解ければ1億円の賞金が約束されているこの予想、あなたもチャレンジしてみませんか?

  • no.28
    2016/7/20UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    ドアの向こうのカルト
    9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録 佐藤典雅/河出書房新社

    著者は現在、「東京ガールズコレクション」を仕掛けるなど、その方面では著名なプロデューサーのようだ。しかし、タイトルにもあるように彼は、9歳から35歳まで「エホバの証人」の信者として生きてきた。
    本書は、彼が何故「エホバの証人」を信じるようになり、そして何故「エホバの証人」から抜け出すに至ったのか、その過程を描いた作品だ。
    「エホバの証人」の話、と言われると、ちょっと特殊な経験だと思ってしまうだろう。しかし本書には、こんな文章が出てくる。
    『洗脳に関して言うと、私のカルト体験談は確かに特殊で極端な環境だった。しかし程度の差こそあれど、広い意味での洗脳は社会のあらゆる所で見られる』
    テレビやインターネットや口コミ。こういったものを無条件に信じることも、ある意味では「洗脳」と言える。そういう「洗脳」からいかに外れたところで生きていけるか。本書はそういう示唆も与えてくれる一冊だ。

  • no.27
    2016/7/20UP

    フェザン店・長江おすすめ!

    炭素文明論
    「元素の王者」が歴史を動かす 佐藤健太郎/新潮選書

    『こうした本を書いたのは、ひとつには化学に対する関心の低さを、少しでも改善したいという思いがあったためだ』
    そう著者は語る。
    本書は、世界の歴史に影響を与えたいくつかの「炭素化合物」を取り上げ、それらを軸に世界史を眺めてみるという、非常に面白い視点で描かれた化学と歴史の本だ。「炭素化合物」と書くと難しそうだろうが、簡単に書けば「デンプン」「砂糖」「ニコチン」「カフェイン」などのことだ。
    内容も、「昆布のお陰で薩摩藩は倒幕出来た」とか、「紅茶がアメリカ独立のきっかけになった」とか、「アメリカ最初の植民地は、ビール不足によって決定された」みたいな話が展開されていく。そう言われると難しい印象は薄れるのではないだろうか?
    歴史も化学も得意ではない僕が全ページの9割以上をドッグイヤーした一冊だ。