さわや書店 おすすめ本

本当は、目的がなくても定期的に店内をぶらぶらし、
興味のある本もない本も均等に眺めながら歩く事を一番お勧めします。
お客様が本を通して、大切な一瞬に出会えますように。

  • no.374
    2019/12/27UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    快楽主義の哲学 澁澤龍彦/文春文庫

    1965年に書かれた本書には、今なお圧倒的な破壊力がある。
    非常に現実主義的なこの主張を前にすれば中途半端なヒューマニズムなど、どう考えても悪い冗談にしか聞こえなくなってしまうので危険だ。常識や伝統、或いは理想や信仰などを非常に大切にされるような真面目な方には決してお勧めできない。今で言うと例えば、SNSで思わず本当の事を言ってしまい大炎上して不特定多数の他者から、けちょんけちょんに罵詈雑言を浴びせられ心が折れそうになりながら引きこもっているような人などに対して、勇気を与える本だと思う。
    本書は先生や近親者などからは決して教えられることの無い人間の本当を、清濁併せ呑む人にしか出せない本物の迫力で教えてくれる。
    ちょっと逆説的で少々荒療治だが。

  • no.373
    2019/12/23UP

    外商部・栗澤おすすめ!

    タスキメシ 箱根 額賀澪/小学館

    ――箱根駅伝100周年・傑作駅伝小説――
    本書は、2015年に刊行された「タスキメシ」の続編。眞家早馬が、弱小校の柴峰大学駅伝部に栄養管理兼コーチアシスタントとして赴任し、キャプテンの仙波千早とともに箱根駅伝出場を目指します。前回同様に、早馬が調理した美味しそうな献立が、物語を彩り、思わずお腹も空いてきます。

  • no.372
    2019/12/20UP

    本店・佐藤おすすめ!

    ふたりはいつも アーノルド・ローベル:作・三木卓:訳/文化出版局

    ――本当の豊かさと幸せを感じる絵童話――
    アーノルド・ローベルのがまくんとかえるくんシリーズ。
    互いの家を行き来しながら、いつも一緒に過ごす二匹。
    違う性格を認め合い、喜び悲しみを分かち合う。
    相手を思いやり、二匹でいれば2倍幸せ。
    豊かな世界がここにあります。
    本作は季節感溢れる巻。5歳~大人まで。

  • no.371
    2019/12/20UP

    本店・大池おすすめ!

    渥美清わがフーテン人生 渥美清/毎日新聞出版

    ――男はつらいよ50周年――
    50作目の「男はつらいよ」公開で書店の店頭も寅さん関連本でにぎわっています。この本は渥美さんの残した唯一の自伝です。幼少期から浅草芸人時代、寅さんまでの歩みを語っています。不良少年時代にテキ屋稼業にあこがれ、今で言う“おっかけ”をやっていて、山田監督との雑談でその話をしていく内に寅さんのストーリーができたそうです。その他、寅さんの裏話がいっぱい出てきます。

  • no.370
    2019/12/20UP

    松園店・山崎おすすめ!

    見るだけで勝手に記憶力がよくなるドリル 池田義博/サンマーク出版

    ――1日数分で簡単!脳トレーニング――
    日々老化する脳を鍛えたい方必見。記憶力をつかさどる脳の各種センサーを刺激し、より活動するのに効果的な問題が全部で70問ほど収録。最も大事なことは集中力と継続。まずは1日数分で、興味のある問題から。難易度も優しめで気軽にクイズ感覚で楽しめる内容。

  • no.369
    2019/12/20UP

    フェザン店・竹内おすすめ!

    ザ・ロイヤルファミリー 早見和真/新潮社

    ――競馬にロマンを!馬主にロマンを!――
    馬にドラマあり、馬主にドラマあり、騎手にドラマあり、厩舎にドラマあり、牧場にドラマありな圧巻の競馬小説で感動の大河小説。時の流れに心揺さぶられ、レースの流れに興奮する。ぐいぐい読ませながらのラストの絶妙な仕掛けに感嘆のため息が出た。

  • no.368
    2019/12/16UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    アースクエイクバード スザンナ・ジョーンズ/ハヤカワ文庫

    幻聴なのか現実なのか。記憶なのか幻想なのか。アースクエイクバード(地震鳥)。東京で警察から事情聴取を受ける主人公の、回想だけの物語。あらゆる事実の中でも、真実はその当人にしか知り得ない。

  • no.367
    2019/12/9UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    日本を支えた12人 長部日出雄/集英社文庫

    小津安二郎『東京物語』――何という事もない日常の中に潜む、人間の醜さも含めたかけがえのなさ。その美しさを画面描写だけで感じさせる、世界的評価の高い日本を代表する映画。
    木下惠介『楢山節考』――民話的・伝説的な雰囲気を十分に醸し出すため、全編をあえてリアルではなく歌舞伎的表現方法で統一。日本でしか生まれ得ない映画芸術の、ひとつの到達点。
    本書でも紹介されている上記の映画は、日本人特有の心の動きと美的感覚を、研ぎ澄まされた手法で描かれている。「もののあわれ」を知る、そんな文化・芸術を生み出す土壌とは何なのか。12人の人物を基に日本を古代から考察する。
    正直、歴史的な事をあまりよく知らない部分も多かったので、本書の内容をすべて正しく理解したとは言えない。ただ、今年は即位礼正殿の儀などもあり、日本古来のものに思いを馳せるにはいい本だと思う。とりあえず、伊勢神宮や東大寺、法隆寺など今一度じっくりと眺めてみたい。それらは若い頃よりもむしろ、大人になってからこそ見るべきものだろう。それと、青森はやはり奥深い。

  • no.366
    2019/12/2UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    庭とエスキース 奥山淳志/みすず書房

    北海道の大自然の中で、自給自足を目指し生活していた孤高の老人・弁造さん。本書は著者と弁造さんの14年間にもわたる交流を通じ、生きること、老いること、死ぬことの意味を深く見つめた手記である。シンプルで力強い弁造さんの言葉やその生き方に、写真家である著者自身の解釈も加わり、非常に陰影のある味わい深い一冊となっている。
    本書を読んでいて映画『ストレイト・ストーリー』を思い出した。巨匠デイヴィッド・リンチ監督の中では唯一と言っていい、安心して万人にお勧めできる映画である。
    老人。自分にはまだ関係ないと思っていても、老いや死は必ず全ての人に訪れる。人生の大先輩の話に耳を傾けることは、たとえそれがどんなものであれ、聴いておいて損はない。虚実が入り交じる世の中にあって、本当に大事なものは何なのかを、問わず語りに身をもって教えてくれる。

  • no.365
    2019/11/25UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    墨龍賦 葉室麟/PHP文芸文庫

    コーマック・マッカーシー脚本の『悪の法則』という映画の中で、宝石商が主人公にこんなセリフを言うシーンがある。――たとえどんなに代償を払っても、人はダイヤの持つ永遠性を追い求めようとする。それが宝石というものです。そして愛する人をダイヤで飾る事で、逆にその人の儚さに気づき、限りある命の価値を知るのです。あなたにも今に分かりますよ。――
    本書は戦国時代の絵師・海北友松の物語である。武士として生きたいと願いながらも、その魂を絵の中に吹き込み、人が生きる上での美を追求する。明日をも知れぬ命という時代の中で、一瞬の美に永遠の価値を持たせる絵を描く事は、今では想像もできないぐらい切実なものだったはずだ。人間の業や命の儚さを見ることで逆にその美しさを知る。人は理想通りには生きられないけれど、自らの思いを体現しようとするのは武士も絵師も変わらない。そして現代に生きる自分達も。