さわや書店 おすすめ本
本当は、目的がなくても定期的に店内をぶらぶらし、
興味のある本もない本も均等に眺めながら歩く事を一番お勧めします。
お客様が本を通して、大切な一瞬に出会えますように。
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no.3592019/10/21UP
本店・総務部Aおすすめ!
それでも、日本人は「戦争」を選んだ 加藤陽子/新潮文庫
過去の戦争の歴史と、現在の世界を取り巻く諸問題とが繋がっている事を感じさせる良書。特に日本の周辺国との地理的な位置関係は、安全保障上のリスクを具体的に考えさせられる。今の上海や台湾の問題、北朝鮮、日韓関係、北方領土問題、さらにEU、中東問題も含め、そこには中国・ロシア・アメリカなど大国の思惑が絡み合う。世界で今も起きている争いのほとんどは自国の歴史と共に、結局は大国の代理戦争と見るべきだろう。
人間と暴力を描いた『ヒストリー・オブ・バイオレンス』という映画がある。直接戦争とは関係ないこの映画に関するあるインタビューの中で、監督はこんなことを言っている。
――人類が戦争のない世界を実現するのは不可能だろう。でもそんな世界を人類は想像する。不可能なことを夢見るのも、人類だけが持つ能力だ。だから、決してあきらめてはいけないんだ。――(デイヴィッド・クローネンバーグ) -
no.3582019/10/12UP
本店・総務部Aおすすめ!
色彩 阿佐元明/筑摩書房
まず、表紙の絵が美しい。
最初目にした時ちょっと気になり、何日か間を置いても吸い寄せられ、いわゆるジャケ買いした。こういう時は本人にとってほぼ間違いないので、本屋に行った時はぜひ試してみてほしい。ちょっと間をおいてもやはり気になるというのがポイントだ。なんちゃら評論家みたいな人の書評で買う場合よりも良かったりする。たまたま目にした自分の勘だけで千いくらの本を買うという行為そのものが、すでにその本の評価を上げているのかもしれない。
本書はボクサーをあきらめ塗装屋で働いている主人公と、油絵をあきらめて入ってきた新人君の、全くそりの合わない二人を軸にした物語である。二人の微妙な化学反応が、なんてことない日常のちょっとした色彩に変化を与え、心の奥底にしまい込んでいたものを溢れさせる。あまり全てを語らない切り口も、すっきりとしていて気持ちがいい。
関係ないが、ボクシング・絵画・塗装屋ときて思い出すのが北野武氏である。『キッズ・リターン』『HANA-BI』『アキレスと亀』…。その他全ての映画に共通して言えるのはストーリーと共に色彩感覚や画の構図の素晴らしさだ。それら美的センスの根本は、著書「菊次郎とさき」にあるような気もする。 -
no.3572019/10/7UP
本店・総務部Aおすすめ!
ボーダー二つの世界 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト/ハヤカワ文庫
ジャンルで言えばホラーという事になるのだろうが、決して怖がらせようという内容ではない。ありえないような異形のグロテスクな表現の中に、それとは別の何か大事なものが隠喩されているように感じる。本書はそんな著者のエッセンスがぎっしり詰まった11篇の物語だ。
著者の原作で2010年に公開された映画『ぼくのエリ 200歳の少女』は、血まみれながらもどこか芸術的で美しい作品だった。本書に収録されている「古い夢は葬って」はこの映画の後日談を表している。やはり本書の中でも美しい物語だった。
まだ観ていないが表題作の映画も楽しみである。 -
no.3562019/9/26UP
フェザン店・竹内おすすめ!
Iの悲劇 米澤穂信/文藝春秋
――岩手にも似たような自治体がありそうな、地域再生ミステリー――
過疎化が進み、誰もいなくなった南はかま市簑石地区。そこに家賃など様々な補助を掲げたIターン支援プロジェクトが始動したが、移住者達でなぜかトラブルが絶えない。トラブルの謎と最後の大きな謎に唸る。「甦り課」に配属された主人公万願寺が奮闘する地方公務員お仕事ミステリー。 -
no.3552019/9/26UP
本店・大池おすすめ!
罪の轍 奥田英朗/新潮社
――今年のベスト1はこれだ――
奥田さん久々の犯罪小説は600ページを一気に読ませる凄い本です。1963年の誘拐事件を基に、随所に「砂の器」「太陽にほえろ」を思わせる場面が出てきます。最終章の東北新幹線と青函連絡船の場面は手に汗握る展開で、その当時夜行列車で上京した人はよくぞ書いてくれたと喝采するでしょう。 -
no.3542019/9/26UP
本店・佐藤おすすめ!
はんなちゃんとへんちくりん 絵・はんなばあば 文・はんなぱぱ/セブン&アイ出版
――病気に立ち向かう子どもに勇気を!――
実際に重い病気を患った、3歳の女の子はんなちゃんの為に、お父さんが考えた絵本です。
病気の正体“へんちくりん”が治療でどんどん小さく弱くなるという、克服をイメージできるストーリー。ひ弱な姿のへんちくりん、子どもはきっとやっつけてやる!と勇気が湧くでしょう。 -
no.3532019/9/26UP
ORIORI・佐々木おすすめ!
鯖猫長屋ふしぎ草紙 田牧大和/PHP文芸文庫
――人情たっぷり猫の魅力満載!謎解き時代小説――
長屋で一番偉いのは「サバ」。誰もが認める美猫のサバと元・盗人の飼い主(手下)拾楽を取り巻く人情時代小説。猫好きはもちろん、ミステリー好きな方にもおすすめです。シリーズ7作とも問わず語りで進められていく粋な手法とツンデレ感満載のサバの魅力に虜になること間違いなし! -
no.3522019/9/26UP
松園店・山崎おすすめ!
イラストだから簡単!
なんでも自分で修理する本 片桐雅量/洋泉社――早速挑戦!気軽に意外と簡単DIY――
網戸、ドアノブ、水回り、自転車修理など数々の不具合を身近なホームセンターで買える工具や部品を自分で買って治してみませんか。ネットのユーチューブなどでも、これらの修理動画などがあったりもしますが、この本で一緒に研究するのも良いかと思います。
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no.3512019/9/26UP
本店・総務部Aおすすめ!
五郎治殿御始末 浅田次郎/中公文庫
武家の道徳の第一は、おのれを語らざることであった――。武士にとって、明治維新という時代にどれほど人に言えない困難や葛藤があった事だろうか。
世の中が大きく変わる中で名もなき最後の武士たちの、自分自身への始末のつけ方、武家としての最後の生き様を描く6篇。特にこの短編集を総括するようなラストの表題作には、時代に対する著者の考え方が色濃く込められている。
著者の幕末から明治の物語でどうしても思い出すのが映画化もされた『壬生義士伝』。そして本書の中では『柘榴坂の仇討』が映画化されている。映画も本当に傑作だった。 -
no.3502019/9/21UP
本店・総務部Aおすすめ!
晩秋の陰画 山本一力/祥伝社文庫
「晩秋の陰画」「秒読み」「冒険者たち」「内なる響き」どれも味わい深い大人の傑作短編集だ。その中でも映画『冒険者たち』へのオマージュには特別な想いが込められているように思う。
時代小説ですでに確固たる地位を築き、多くのファンを獲得しているにもかかわらず現代小説を書いた理由。それはどんなに年齢を重ねても、どんなにベストセラーを出し評価を受けたとしても、著者自身が敬愛する映画『冒険者たち』の精神を忘れないという、意志の表れのようにも感じた。