さわや書店 おすすめ本

本当は、目的がなくても定期的に店内をぶらぶらし、
興味のある本もない本も均等に眺めながら歩く事を一番お勧めします。
お客様が本を通して、大切な一瞬に出会えますように。

  • no.442
    2020/12/15UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    幻の女 ウイリアム・アイリッシュ/ハヤカワ文庫

    印象的な一行目で始まるミステリーの古典的名作。
    ロジックだけがいかに素晴らしくても名作と呼ばれるとは限らない。本書はテクニカルな謎解きだけでなく、文章自体が洒落ていて、どこか匂い立つような味わい深さがある。情景や人物の描写など普通に小説として面白く、そしてラスト鮮やかにミステリーが解き明かされるところが、名作と呼ばれるゆえんだろう。
    どんな種類の作品でも、時代の変化に関わらず古典として後々まで残るような物語には、それなりの理由がある。新しいものをどんどん追い求めるのもいいが、古いものに新しさを見出すのも悪くはない。古いもので今でも残っているものといえば結局、普遍的な本質を衝いているものばかりなのだから。

  • no.441
    2020/12/7UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    緋色の稜線 あさのあつこ/角川文庫

    心にわだかまり続けている消せない染みを、そっと浄化してくれるような小説だ。どこか懐かしく、遠い記憶を思わせる情景が、切なさを際立たせる。
    全く罪のない人間なんていない。相手から許されない罪を犯してしまった場合、それは一生背負って受け入れるしかないだろう。ただ、相手をどうしても許せなかったり自分自身を許せない場合、それを一生抱えて生きていくのは重すぎる。自分のために、自分の中で決着をつけなければならない。その背中を少しだけ押してくれる。

  • no.440
    2020/12/7UP

    本店・大池おすすめ!

    おもかげ 浅田次郎/講談社文庫

    浅田次郎さんの原点「地下鉄に乗って」の続編。
    定年を迎えた主人公の竹脇は、送別会の帰りに地下鉄で倒れ集中治療室で生死をさまよっている中で、母や幼くして亡くした息子の夢を見るという内容。泣きの浅田次郎節全開の小説。
    ラストの地下鉄銀座線の場面はハンカチ10枚用意して泣いてください。

  • no.439
    2020/12/7UP

    本店・大池おすすめ!

    影に対して 遠藤周作/新潮社

    今年、長崎市遠藤周作文学館の資料から発見された「影に対して」を中心に母をめぐって書かれた著者の作品を編集部がセレクトした7つの短編からなっている本です。
    著者が30才のときに急逝した母を長い時間をかけて書き継いだ作品で、母に対する思いが少しずつ変化して、深まりを見せていくのがわかります。
    最終章の「還りなん」は心にしみました。

  • no.438
    2020/12/7UP

    本店・大池おすすめ!

    どくとるマンボウ青春の山 北杜夫/ヤマケイ文庫

    この本は著者の山のエッセイを単行本未収録作品を含めて新編集したものです。
    第一章の「終戦前後のアルプス」の中で、“叔父の影響で旧制松本高校に入学したのは終戦の年、食糧難で米が手に入ってはじめて山に登れる時代、その時に西穂高に登り、これでいつ死んでもいいという気持ちがしたと書いています。他はユーモアたっぷりの文章で笑わせます。

  • no.437
    2020/12/7UP

    フェザン店・竹内おすすめ!

    滅びの前のシャングリラ 凪良ゆう/中央公論新社

    ――今年のおすすめ短編集――
    一編ごと主人公が代わり、目線を変えながら壮大な物語を紡ぐ短編集。一ヶ月後に小惑星が地球に衝突し世界が滅ぶ。人類滅亡を前に荒廃していく世界の圧倒的なリアリティー、人生の落伍者4人の最後の生きざま。圧巻です。

  • no.436
    2020/12/7UP

    フェザン店・竹内おすすめ!

    八月の銀の雪 伊与原新/新潮社

    ――今年のおすすめ短編集――
    全編通して科学の美しさに触れられ科学が好きになる短編集。自然の摂理の不思議なほどの理法に、うまくいかない人生が重なるとき、ふわりと救われる。つらい状況にある者たちを地球の真理が優しく包む温かい物語です。

  • no.435
    2020/12/7UP

    フェザン店・竹内おすすめ!

    犬がいた季節 伊吹有喜/双葉社

    ――今年のおすすめ短編集――
    高校に住み着いた一匹の犬の生涯を通して、12年間それぞれの時代を切り取った短編集。犬と過ごした18歳高校生たちの甘く切なくさわやかな青春に自分の青春が重なり、ノスタルジーとともに思い出が甦ります。

  • no.434
    2020/12/7UP

    外商部・栗澤おすすめ!

    70歳の新人施設長が見た介護施設で本当にあったとても素敵な話 川村隆枝/アスコム

    ――「いわて関連本」今年のおすすめ――
    縁あって滝沢市にある介護施設の施設長になった盛岡市在住の著者。
    自宅での亡夫の介護経験に加え、介護施設現場での心温まるエピソード、さらに医師としての介護に関する知見など、読みどころ満載のエッセイ集です。

  • no.433
    2020/12/7UP

    外商部・栗澤おすすめ!

    南部鉄器のある暮らし 釜定の仕事 釜定・書籍プロジェクト実行委員会/青幻舎

    ――「いわて関連本」今年のおすすめ――
    盛岡市紺屋町にある工房・釜定の魅力が詰まった贅沢な一冊。
    シンプルでモダンな商品の美しい写真とともに、釜定の歴史も知ることが出来ます。
    工房を覗く勇気がないという方も、まずは本書を手にとってみてはいかがでしょう。