さわや書店 おすすめ本

  • no.650
    2026/5/14UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    オリーヴ・キタリッジの生活 エリザベス・ストラウト/ハヤカワepi文庫

    タイトルになっているオリーヴ・キタリッジという女性はあまり出て来ない。その周りの人々を描くことで、人間の陰影も奥行きも立体感をもって浮かび上がらせる。そして、時間の経過は誰にも均等に残酷であったとしても、時に不思議な味わい深ささえ醸成される。オリーヴ・キタリッジという人はいい人でも幸福でもないのに、読後に感慨深い余韻が残る。名作群像劇とはそういうものなのだろう。
    映画で言えば『スモーク』『マグノリア』『21グラム』『めぐりあう時間たち』『美しい人』などは名作群像劇だと思う。本書も含め、いわゆるいい話ではないので、良さが全く分からないという人もいるのは理解できる。ある程度の年齢を重ね、振り返って俯瞰してみた時にのみ、深く心に刺さるのだと思う。カズオ・イシグロの名作『日の名残り』の美しさのように。