さわや書店 おすすめ本

  • no.648
    2026/5/1UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    死ぬまでに行きたい海 岸本佐知子/新潮文庫

    記憶を旅するエッセイというべきか。この記憶を伴う著者の思考回路が常人とは違いかなり面白い。翻訳家である著者のエッセイはある意味、信頼できない語り手の上質な短編を読むような面白さがある。随所に掲載されている写真もかなり味わい深い。
    アハハと笑いながら油断して読んでいると、世代も環境も違うのに自分の昔のことを思い出したりして突然胸が締め付けられる。切なさ注意です。幼稚園の時の記憶など自分にはほとんどないと思っていたが、よくよく辿ってみると微かな断片のような記憶がいくつか残っている事に気付かされる。
    最後に収録されている「経堂」は読み終わった後、ゾクッとした。本当にあった話なのか幻想なのか。幻想だとするといったいどこから幻想だったのか。まさか始めからか。何の説明もなくぷっつりと終わるので更に怖い。やられた。