さわや書店 おすすめ本

  • no.647
    2026/4/23UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ロリータ ウラジーミル・ナボコフ/新潮文庫

    さて、問題の「ロリータ」である。だいぶ前に一度読んだきりで、今回再読してみた。読んでみて改めて「テヘランでロリータを読む」の先生は見事な選書だったと感心する。
    一人称での物語がいかに危うく、いかに信頼できない語り手か。そして、そんな中でもラストの描写にはいくらかの真実が含まれているのではないか。つまり、かつてのロリータでなくなった相手に対してなお愛を悟った時、初めて取り返しのつかない大罪を自覚したのではないか。H・Hはそんな最後の贖罪をするためだけに長々とこの物語を書いたのではないのか。そんな事を思う。再読してみると少し印象が変わったような気がする。
    まあ他にもいろいろな解釈ができる物語なので、イスラム世界だろうがキリスト世界だろうが、どんな世界に属する人間であれ本書を題材にした場合、議論は尽きないだろう。題材は明らかにタブーだし、こんな物語は許せないという人もいるのは理解できる。ただし、人間を深く掘り下げた議論をするならば格好のテキストになり得るし、それこそが古典の名著たる所以なのだろう。倒錯した文章が魔術的で不思議と美しい。