さわや書店 おすすめ本

  • no.607
    2024/12/26UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    チーヴァー短篇選集 ジョン・チーヴァー/ちくま文庫

    名作短編はちょっと難しい。文章が難しいわけではなく、短いのでどう取るかは読者しだいになる。説明なしにバッサリ切ってあるので、何を言っているのかを考える余白が大きい。不穏な空気と、見方によってはユーモアが混ざり合う中、話を目の前にポンと出されて終わるので、どう読んだのかが試されているような気もする。全15編すべてにクセになるような苦みが残る。本書の中では「さよなら、弟」「兄と飾り箪笥」「美しい休暇」「海辺の家」「橋の天使」が特に心に残った。
    レイモンド・カーヴァーの短編小説にも似ているが、こちらの方がより削られていると思う。これらの本や個人的に偏愛するオムニバス映画『美しい人』や『ナイト・オン・ザ・プラネット』なども下手をすると“だから何?”となる人もいるだろうことはよくわかる。ただ、こういう種類のものの解釈に正解はないので飽きが来ない。ずっと噛んでいられる味のなくならないガムのようなものだ。