さわや書店 おすすめ本
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no.6052024/12/2UP
本店・総務部Aおすすめ!
ダブリナーズ ジェームズ・ジョイス/新潮文庫
アイルランドの首都、ダブリンの人々を描く名作短篇集。全体で完結する群像劇とも言える。暗い雰囲気の漂う中、そこに住む生活者たちの悲喜こもごもを描き、大きな盛り上がりもないのにラストは深く心に染み入るような小説だった。そう言えば少し前に観た映画『ベルファスト』も北アイルランドの首都を描くいい映画だったと記憶している。
群像劇として見るならば、いろいろな話があって最後に全体として納得感のある絵を見いだせるかどうかにかかっていると思う。映画で言えば『スモーク』や『マグノリア』などはあまり品のいい映画ではないのかもしれないけれど、個人的には好きな傑作群像劇である。
本書もやはり、いろいろと味わい深い短編が続く中で最後の2篇「恩寵Grace」と「死せるものたちThe Dead」によって、全体として納得感のある名作になっているのだと思う。人の名前などは気にせず、気軽に群像劇として読んでみてほしい。