さわや書店 おすすめ本

  • no.542
    2023/3/25UP

    本店・総務部Aおすすめ!

    ペドロ・パラモ フアン・ルルフォ/岩波文庫

    本書と「燃える平原」。生涯でこの2作しか残されていない、伝説の作家フアン・ルルフォ。ノーベル文学賞のガブリエル・ガルシア=マルケスにも大きな影響を与えたと言われている。マジック・リアリズムだとか円環構造だとかいろいろと語られるが、あまりそういうことにこだわらずに読んだ方がいい。2冊ともごく薄い本なので気軽に読んで面白くないならないでその通りなのだと思う。意味が分かろうと分かるまいと、合うものは合うし、合わないものは合わない。関係のない難解映画で例えるならば『マルホランド・ドライブ』は、全く意味は分からないながらも、これは凄いということだけは初見で感じた。それは構造を理解したからではなく、意味を超えてダイレクトに感じたのであって、意味が分かったところで評価が変わるわけでもない。
    フアン・ルルフォの、あらゆる無駄を削ぎ落したような語り口。土地の描写と心象風景だけで伝える濃度。人の名前とかも気にせず群像劇のように読む事ができれば、それで充分なのだと思う。どこかが刺されば、自然と2回目を読み返したくなる。