さわや書店 おすすめ本
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no.5362023/2/11UP
本店・総務部Aおすすめ!
アンダークラス 相場英雄/小学館
昨年末、番組の中で2023年は「新しい戦前になるんじゃないですかね」というタモリさんの言葉が話題になった。世界の不穏な流れもあっての話だと思うが、これは戦争というよりもむしろ経済や一般市民の生活を言っているような気がする。テレビ業界の栄枯盛衰を知り尽くし、人間観察が得意なタモリさんだからこそ感じる現代への嗅覚なのだろう。
コロナ禍の3年を経て、地方都市はますます困窮を極めている。中心市街地は空洞化し、駅前の寂しい風景が今や標準的な地方都市の姿だ。そんな中、先月米誌ニューヨークタイムズで「2023年に行くべき52カ所」に盛岡が選ばれた。「東京から数時間で行けて人混みもなく歩いて回れる珠玉の街」と紹介されている。
本書は大手ネット通販サイトの闇を描いている。すべての小売店が今、巨大IT企業に飲み込まれようとしている。コロナ禍でその便利さを享受された方も大勢いると思うが、一方で地方経済、雇用、公共の祭りやイベント、街づくり等には一切関係なくその収入だけが音もなく吸い取られる。地域の経済が徐々に体力を失えば、住んでいる街もやがては衰退していくだろう。利便性を追求したその先に、美しい街並みは残されているだろうか。あるいは「新しい戦前」か。本書を読んでいてそんなことを思う。