さわや書店 おすすめ本
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no.5332023/1/18UP
本店・総務部Aおすすめ!
死んでたまるか 団鬼六/ちくま文庫
いいなあ。自分とは全然世代が違うものの、しみじみいいなあと思えるエッセイだった。ニヤリとさせ、時にホロリとさせ、やがて大きく唸らされる。著者名のイメージに臆することなく読んでみてほしい。少年期から老年期まで時代ごとのエッセイを自選でまとめている。よく、世代をひとくくりにしたような物言いをする人がいるが、何時の時代でも見当違いは必ずいるし、変わらない価値も必ずある。解説の黒岩由起子さん(秘書/長女)の文章がまた素晴らしく、名文だった。
全く関係ないが先日、映画『宮松と山下』を観に行く。セリフが少なく、主演の香川照之の佇まいだけで表現する見事な演出、長い“間”をたっぷりと効かせた職人技の演技だった。一人の人間の中にある宮松と山下、その矛盾。
本書のあとがきによると、官能小説が本妻なら、自伝、エッセイは愛人のようなものだとご自身では評している。こんないい愛人を書く人の対極にあるかのような本妻、SM小説とはいかなるものだったのか。今更ながら、おそるおそる覗いてみたい気もする。